【歯科医師勉強・生理学】顎・口腔・顔面の体性感覚
今回は顎・口腔・顔面の体性感覚についてまなんでいきました。
僕らが普段感じている感覚のメカニズムについて勉強していったのでとても興味深い内容でした!
では早速見ていきましょう!
顔面・口腔粘膜の表在感覚について
全身の皮膚感覚(触圧覚、温度覚、痛覚)と類似していて、機序は感覚受容器(受容器電位)から末梢神経(活動電位)に伝わって中枢へ行き、最終的には大脳で知覚。(機序も同じ)
口腔感覚は体性感覚と類似しているが、歯髄は痛覚しかない!
顔面・口腔領域の体性感覚を支配している神経は、三叉神経、舌咽神経、迷走神経である。
三叉神経は顔面の大部分、口腔、舌前方2/3に分布する。
舌咽神経は舌後方1/3、口峡、咽頭に分布する。
特殊感覚である味覚を支配している神経は顔面神経、舌咽神経、迷走神経である。
顔面神経では舌前方2/3を鼓索神経が、軟口蓋を大錐体神経が支配している。
舌咽神経は舌後方の1/3の知覚と味覚を支配している。
迷走神経は咽頭の知覚と味覚を支配している。
『三叉神経について』
第1枝は眼神経で上眼窩裂を、第2枝は上顎神経で正円孔を、第三枝は下顎神経で卵円孔を通る。眼神経と上顎神経は運動性線維を持たず機能は知覚であるが、下顎神経は運動性線維を含むため機能として運動と知覚がある。
(補足)
下顎神経が支配する筋は8つあり、咀嚼筋4つ(側頭筋、咬筋、内側翼突筋、外側翼突筋)
開口筋2つ(顎舌骨筋、顎二腹筋前腹)、張筋群2つ(鼓膜張筋、口蓋帆張筋)
また三叉神経が関係しそうな疾患として歯痛、三叉神経痛、片頭痛・群発頭痛、帯状疱疹がある。
眼神経、上顎神経、下顎神経は三叉神経路から出ており、三叉神経節は
脳神経で最も大きな神経節である。
中枢投射路では、顎関節や舌などの知覚線維(一次求心性線維)が
三叉神経節を経由して三叉神経主感覚核や三叉神経脊髄路核に送られて
二次ニューロンに伝わって視床(後内側腹側核VPM)を介して大脳皮質
(第一次体性感覚野S1)に行く。三叉神経主感覚核は運動や反射に関係する。
三叉神経脊髄路核には吻側亜核・中間亜核・尾側亜核があり、吻側亜核は運動と
開口に、中間亜核は触覚と圧覚に、尾側亜核は痛覚に関係する。
皮膚における感覚受容器について
メルケル細胞は軽い触覚、機械受容している、全ての脊髄動物にあるという特徴がある。
引っ張られるとPiezoチャネルが開いて電流が流れることで電位が変わり、
電位依存性Ca⁺チャネルが開いてCa⁺が入ってきて神経伝達物質が放出される。
すると求心性神経終末の受容体がそれをキャッチすることで電位が生じ、
電位依存性Na⁺チャネルが開いて活動電位が生じて終末に伝わっていく。
各感覚点には神経が来ており、痛みと触覚、温度覚は異なる神経が伝える。
また刺激が活動電位の頻度に置き換えられることを符号化といい、
活動電位(インパルス)がないと刺激は伝わらない。
順応とは受容器が慣れてしまって活動電位が出なくなることである。
また部位によって受容野の広さは異なり、腕や背中は広い受容野で
二点として認識されないが、指先は狭い受容野で二点として識別される。
深い位置に感覚器があると、ギューっと押さないといけないので不明確に
なりやすい。
『TRPチャネルについて』
温度や化学物質は自由神経終末の細胞表面にあるTRPチャネルが受容する。
温冷覚や痛覚に関与しており、V1は唐辛子のカプサイシンを感じる。
M8は三叉神経に発現しており、メントールに反応するため口腔内に冷涼感を感じる。
(参考)口腔粘膜の機械的刺激に対する受容器
触圧覚:Merkel触盤,Meissner小体,Ruffini小体,Krause小体
温冷覚・痛覚:自由神経終末、TRPチャネル
顔面皮膚:毛包受容器(顔面にはPacinian小体はあっても稀)
(注)閾値が低いということは閾値に達しやすいから感度が高いということ。
感覚の鋭敏さについて
口腔粘膜は組織学的に以下の3つに分けられる。
咀嚼粘膜:軟口蓋や歯肉、角化していて咀嚼時に食べ物が接触する部位
被服粘膜:軟口蓋、舌下面、口腔底、歯槽粘膜、口唇粘膜、頬粘膜は非角化で可動性がある。
特殊粘膜:舌背で、舌乳頭など特殊な構造を持つ。
感覚の鋭敏さは粘膜の構造(角化の程度など)や解剖学的性質(神経の分布密度など)に より影響を受ける。
顔面皮膚は感覚が鋭敏で、口唇外皮部は二点弁別や触覚閾値が指先と同等 図
正中部は二点弁別が敏感である。鼻周囲は触覚閾値や痛覚・温度覚が敏感である。
(参考)顔面表面の感覚の受容器
三叉神経支配である。受容野は小さく遅順応性で探索行動を行わない。
触圧覚:Merkel触盤,Meissner小体,Ruffini小体,Krause小体、毛包受容器
温冷覚・痛覚:自由神経終末
『舌の感覚』
舌背は特殊粘膜で、舌下面は被覆粘膜である。
・触圧覚
舌尖;感覚に非常に敏感(受容器高密度に分布)で、二点識別は1㎜と身体の中で最小
舌背:後方、側方は二点識別と閾値とも悪化する。
舌下面:角化層は薄く、触圧覚敏感である。
・温覚:顔面より鈍いが、口腔粘膜では最も鋭敏
冷覚:顔面と同等で他の口腔粘膜とも同等である。
温度変化の識別は温冷覚とも鋭敏である。
・痛覚
舌下面:口腔底同様に非常に敏感である。
舌背:舌尖で他の舌背部より敏感である。
舌筋の痛みは深部痛で鈍い痛みであり、場所の同定は困難である。
(参考)舌の感覚受容器:三叉神経、舌咽神経支配である。
粘膜
触圧覚:Merkel触盤,Meissner小体,Ruffini小体,Krause小体
温冷覚・痛覚:自由神経終末
受容野は小さく、速順応性(無毛部皮膚に類似)探索行動や操作を行うアクティブタッチや性状認知に関係する。
深部感覚(舌筋):筋紡錘(内・外舌筋)、腱器官、パチニ小体などがある。
深部近くの受容器を固有受容器という。固有受容器から舌下神経を介して頚髄にシグナルが入ってきて、反射的に舌の筋活動を調節する。
『口唇の感覚』
構造として外皮部、移行部、粘膜部がある。
以下感覚の特徴
触圧覚:非常に鋭敏、二点弁別は移行部(指先と同等)>口唇粘膜部>外皮部
舌尖>口唇移行部>口腔粘膜
温覚:舌と同様に顔面皮膚より鈍い、口腔粘膜内では鋭敏 外皮部>移行部と粘膜部
冷覚:皮膚と同等、温度変化の識別は温冷覚とも指先よりも鋭敏
痛覚:移行部や粘膜部>外皮部より鋭敏
(参考)口唇の感覚受容器:三叉神経支配である。
粘膜
触圧覚:Merkel触盤,Meissner小体,Ruffini小体,Krause小体、毛包受容器(外皮部)
温冷覚・痛覚:自由神経終末
受容野は小さく、速順応性(無毛部皮膚に類似)探索行動や操作を行うアクティブタッチや性状認知に関係する。
『口腔粘膜』
部位として頬粘膜、歯槽粘膜、歯肉、口蓋粘膜、口峡粘膜、口腔底粘膜がある。
感覚点の密度:痛点>触圧点>冷点>温点(通常の皮膚と同じ順)であり、口腔の前方で高密度、後方は低密度である。
触圧覚:前方部は密度が高く、鋭敏さは指先に匹敵する。
温度感覚:飲食物の温度識別を行うが、皮膚より鈍い。口唇外皮部は55℃~60℃、口腔粘膜は60~65℃で反応する。鈍い理由として分布密度が温点<冷点であること、唾液で冷却されること、食物が移動し長時間接触しないこと、温点冷点とも前方部で密度が高いことがある。
痛覚:痛点は軟口蓋移行部や歯肉頬移行部で密度が高い。
非常に鋭敏な部位として口唇では上唇移行部、舌では舌尖と舌下面、口蓋では軟口蓋
非常に鈍感な部位としては頬粘膜のキーゾウの領域がある。
(参考)キーゾウの無痛領域は、第二大臼歯の頬粘膜中央部から口角にいたる帯状の部分で、痛点の分布密度が著しく低い。頬粘膜感覚は刺激が加わるために口腔粘膜のほかの部位に比べて鈍感である。(咀嚼時に嚙んでしまうかもしれないから)