【歯科医師勉強・生理学】酸塩基平衡について
今回は酸塩基平衡についてお話していこうと思います!
高校で学んだ化学の酸塩基平衡の延長上の範囲だったので、理解しやすいと思うので是非ご覧ください!
はじめに
細胞外はアルカリ性で㏗7.4であり、細胞内は㏗7である。
多くの場合代謝産物は酸性であり、細胞外がアルカリ性であること
により細胞内外のH⁺の濃度に勾配が生じて細胞内のH⁺は細胞外に
移動しやすくなる。このような濃度勾配によるH⁺の移動を
シンク作用という。血液の㏗が低下すると緩和する為に
H⁺がK⁺と交換で細胞内に入る。
血液が酸性(㏗が7.35より小さい)になっている状態をアシデミア(酸血症)という
血液がアルカリ性(㏗が7.45よりも高い)の状態をアルカレミア(アルカリ血症)という。
酸血症やアルカリ血症になる病態をそれぞれアシドーシス、アルカローシスという。
(糖尿病性ケトアシドーシス、下剤、嘔吐、呼吸不全など)
これらを起こすものに呼吸性のものと代謝性のものがある。
(呼吸性アシドーシス・アルカローシス、代謝性アシドーシス・アルカローシス)
また呼吸性と代謝性が混ざって血液が酸性やアルカリ性になったりするのを混合性という。
(参考)
骨形成に関係するカルシウムやリンも酸塩基平衡と関係しており、血液が酸性に傾くと 骨量の低下をきたす。(歯槽骨など)
腎臓からの酸の排泄について
細胞呼吸でCO₂として産生される酸を揮発性酸といい、食事や細胞代謝
(硫酸、硝酸、リン酸イオンなど)で負荷される酸を不揮発性酸という。
酸(H⁺)はいったん細胞外液、さらには血液の㏗緩衝系で緩衝される。
人では炭酸-重炭酸緩衝系が重要でHCO₃⁻が消費される。
(H⁺+HCO₃⁻⇔H₂CO₃⇔H₂O+CO₂)
揮発性酸(CO₂)は呼吸により肺から排泄され、不揮発性酸(H⁺)は
腎臓から排泄される。(便中へのHCO₃⁻の喪失)
HCO₃⁻の補充は腎臓(集合管)から尿中に酸(不揮発性)を排泄する、
つまり腎臓でHCO₃⁻を新生することにより補われる。
酸塩基平衡にとって腎臓はきわめて重要な働きをしており、
通常の尿の㏗は中性~弱酸性(㏗6前後)に保たれてる。
血中に酸が増えると腎臓からはH⁺が排泄されるため、尿の㏗も
下がって、酸性尿となるので血液の㏗の状況が尿の㏗に反映される。
ただし、尿は㏗4.5以下にはならないのでH⁺はHPO₄²⁻(リン酸水素イオン)
と結合してH₂PO₄⁻(リン酸二水素イオン)あるいはNH₃と反応してNH₄⁺として排泄される。
尿の㏗の最低値は4.5であり、集合管の管腔測細胞膜は約800倍のH⁺の濃度差に耐えていることになるが、この㏗でもH⁺の排泄量は一日尿中酸排泄量の1%程度に過ぎず、酸排泄はH⁺ではなく、尿の㏗低下(HCO₃⁻の中和)、滴定酸排泄(ほとんどがリン酸イオン)や、アンモニウムイオン排泄によって行われるが、酸負荷に反応して腎臓からの酸排泄を増加されるのは主としてアンモニウムイオン排泄である。なぜなら尿㏗は最高に酸性化されたとしても0.04mEq/Lしか排泄出来ず、これでは負荷されたH⁺の量(50mEq/day)の排泄を行うには不十分である。滴定酸は10~40mEq程度の緩衝能力しか持たないので、3番目のアンモニウムイオン排泄が酸排泄調節機構として最も重要である。
酸塩基平衡異常の診断ステップについて
(Step1)㏗値に従いアシデミアかアルカレミアかを診断する
㏗<7.35(アシデミア)、㏗>7.45(アルカレミア)、㏗=7.35~7.45(正常 範囲)
(Step2)アシデミアの時
アルカレミアの時
㏗=7.35~7.45(正常範囲)の時
PCO₂>40mmHgなら呼吸性アシドーシスと代謝性アルカローシスの合併
PCO₂<40㎜Hgなら呼吸性アルカローシスと代謝性アシドーシスの合併
(Step3)アニオンギャップ(AG)を計算する。(右図参照)
アニオンギャップとは通常測定されない陰イオンであり
硫酸イオン、乳酸イオン、ケトン体などが含まれている。
アニオンギャップが上昇していれば不揮発性酸の増加
(代謝性アシドーシス)を考える。またアニオンギャップは
アルブミン1g/dl毎に2.3~2.5meq/L変化する。
(Step4)補正HCO₃⁻の計算
(Step5)代償機構が予測範囲内か
(Step6)最終的判断、原因病態の検索