【歯科医師勉強・生理学】体性感覚①について
今回は生理学で学んだ体性感覚についてお話していこうと思います!
感覚のメカニズムを理解出来て「そんな感じで感覚って生じてるんや!」って感じになれたので是非ご覧ください!
まず、体性感覚は刺激と感覚受容器の関係で3つに区分される。
機械受容性感覚:触覚、圧覚、振動覚(表面感覚)深部圧覚、固有感覚、振動覚(深部 感覚)
温度受容性感覚:温覚、冷覚(表面感覚)
侵害受容性感覚:痛覚(表面感覚)、深部痛覚(深部感覚)
体性感覚の感覚受容器について
温度受容器:自由神経終末
侵害受容器:自由神経終末
機械受容器:自由神経終末
器官化終末:マイスナー小体、筋紡錘、パチニ小体、メルケル触盤
体性感覚はほとんどが一次感覚細胞であるが、メルケル触盤は二次感覚細胞であることに注意する。
表面感覚について
<触圧覚>
皮膚表面の弱い刺激によって生じる感覚で、軽く触れたときの感覚を触覚、軽く圧した時の感覚を圧覚という。また数10Hz~数100Hzの繰り返し刺激により生じる感覚を振動覚という。
1.速順応性機械受容器(触覚)
マイスナー小体やパチニ小体、毛包受容器があり、皮膚や粘膜の伸展や変形で発生した感覚が速やかに順応する(持続はしにくい)ことで触れた感覚である「触覚」が鋭敏化される。
2.遅順応性機械受容器(圧覚)
メルケル触盤やルフィニ小体があり、順応が遅いために持続的な一次感覚ニューロンの 活動電位が生じて、持続圧に対する「圧覚」が鋭敏化される。
「順応性と受容野による触圧覚の受容器の分類」
遅順応性受容器(圧覚受容器)
メルケル触盤(SAⅠ):受容野が狭く、局所的な持続的接触に関わり、
表皮基底層(無毛部)にある。
ルフィニ小体(SAⅡ):受容野が広く、皮膚の変形と伸展に関わる。
真皮下層にある。
速順応性受容器(触覚受容器)
マイスナー小体(RAⅠ):受容野が狭く、繊細な触覚である。低周波の振動覚を感じる。
真皮乳頭部(無毛部)にある。
パチニ小体(RAⅡ):受容野が広く、著しく順応が速い。高周波の振動覚を感じる。
真皮下層や皮下組織にある。
毛包受容器(RAⅠ):受容野が狭い。毛の動きを感じる。(有毛部)
「感覚受容分子メカニズムと刺激エネルギーの感覚情報変換過程」について
感覚受容器(一次・二次感覚細胞)は、刺激エネルギー(機械刺激、温度刺激、侵害刺激、化学刺激など)をセンサータンパク質(受容体)によって受容している。
この受容体には、代謝型(Gタンパク質共役型)受容体とイオンチャネル型受容体がある。
代謝型受容体は視覚、味覚、嗅覚、痛覚(化学物質による侵害受容性感覚)に関わっている。
刺激が来ることで様々な細胞内情報伝達が起こることで、細胞内のCa⁺を放出させることで細胞内の陽イオン濃度を増加させる。これにより脱分極性の起動電位や受容器電位が 起こり閾値に達すると活動電位が起こり、シグナルが伝達していく。
イオンチャネル型受容体は触圧覚、温冷覚、痛覚に関わっている。これはイオンチャネルが刺激によって開いてイオンを通す構造をとる。種類として侵害刺激や温度刺激や機械刺激に関わるTRPチャネルや、機械刺激に関わるPiezoチャネルがある。
(補足)Piezoチャネル(触圧覚の受容体)
触圧覚刺激はPiezoチャネル(低閾値機械受容チャネル)によって
受容される。皮膚が押されると機械刺激によりPiezoチャネルが開いて
陽イオン(Na⁺)が細胞内に流入することで電位依存性Ca²⁺チャネルが 図
開口して細胞内のCa²⁺濃度が上昇する。これによりシナプス小胞の
開口分泌が起こってシナプス小胞に蓄えられてる神経伝達物質が分泌される。
するとAβ求心性線維(一次感覚ニューロン)で受容器電位が発生して
閾膜電位を超えると活動電位が生じて興奮伝導(求心性伝導路)が起こる。
<温度感覚>
温覚(C線維)33℃~42℃、冷覚(Aδ・C線維)16℃~33℃であり、33℃付近の温度刺激で温冷覚は生じず、これを無感温度という。温度刺激を持続させると順応を生じる。
15℃以下、43℃以上で侵害受容性感覚(痛み)が生じる。温度感覚はある種の化学物質 (メンソール、カプサイシンなど)によっても引き起こされる。
温度域によって異なる受容体(TRPチャネル)が関与する。
温覚33~42℃⇒TRPV3・TRPV4チャネル、冷覚16~33℃⇒TRPM8チャネル
痛覚43℃以上(TRPV1)、15℃以下(TRPA1)となる。
TRPスーパーファミリーは6つのサブファミリ―、27チャネルで構成される遺伝子ファミリーであり、TRPチャネルは温度感受性チャネルであるとともに、カプサイシン、メンソールなどの多様な刺激により活性化される。
感覚点について
皮膚に点状の刺激を与えたときに周囲より感覚感受性が特に高い部位を感覚点という。
感覚点に対応して受容器が存在する。触点、温点、冷点、痛点がある。
感覚点の分布密度が高いほど感覚の空間的鋭敏さは増す。つまり二点弁別閾は狭くなる。
分布密度は痛点>触点>冷点>温点となっている。感覚点は頭部顔面口腔領域で密度が高く、次いで上肢、体幹、下肢の順になる。特に口腔領域の感覚は鋭く、一次体性感覚野領域も広い。
深部感覚には深部圧覚、固有感覚、振動覚、深部痛覚があり、固有感覚における筋・腱の 動きに関連する受容器は筋紡錘、ゴルジ腱器官であるこれらの深部受容器からの求心性信号が深部反射を発現させるとともに上行性に大脳皮質感覚中枢へ伝わり、多様な深部感覚が起こる。
体性感覚の求心性(上行性)伝導路について
体性感覚の上行性伝導路には後索-内側毛帯路(後索路)、前・外側脊髄視床路(脊髄視床路)、三叉神経視床路がある。
後索-内側毛帯路(後索路)
精細な触圧覚・深部圧覚の伝導路である。一次ニューロンが脊髄に入り、
同側の脊髄後索を上行して延髄後索核で二次ニューロンとシナプス連絡する。 図
二次ニューロンは対側へ交差して内側毛帯を上行して対側のVPL核で
対側の大脳皮質の一次体性感覚野へ投射される。
脊髄視床路
温痛覚・粗大な触圧覚の伝導路である。一次ニューロンが脊髄に入り、
温痛覚を伝えるニューロンは側索(外側脊髄視床路)、粗大な触圧覚を 図
視床VPL核で3次ニューロンとシナプス連絡する。3次ニューロンは
対側の大脳皮質一次体制感覚野へ投射される。
また識別性触覚(精細な感覚)は触れられた部位や物体の性状がわかるような精細な触覚。後索-内側毛帯路が該当する。
非識別性触覚(粗大な触覚)は、何かが触っているのはわかるが、はっきりとした部位や触っているものの性状などが分からない大まかな感覚。前脊髄視床路が該当する。
ブラウン-セカール症候群について
脊髄は一次、二次ニューロンの上行性伝導路となっているため、
脊髄が完全に切断されると切断側から末梢の感覚機能は全て消失する。
脊髄の半側が障害された時の症状をブラウン-セカール症候群という。
障害部位以下で起こる感覚麻痺や運動麻痺の症状があり、同側で
触圧覚障害・深部感覚障害・運動麻痺、反対側で温痛覚の障害が起こる。
これは触圧覚・深部感覚と温痛覚の伝導路が異なるためである。
切断側は触圧覚や深部感覚の障害(後索路の障害)、運動麻痺(錐体路の障害)
対側では温痛覚の障害(外側脊髄視床路の障害)が起こる。