【歯科医師勉強・生理学】顎運動・顎反射(1)
今回は顎運動と顎反射について学んでいきました!
運動や反射に何の筋や神経が関係しているかなども大切だったので少し解剖学の知識も必要となりました。
では早速見ていきましょう!
顎関節の構造について
頭蓋骨と下顎骨を繋ぐ靭帯には外側靭帯と副靭帯があり、副靭帯には茎突下顎靭帯と蝶下顎靭帯がある。
『顎関節の内部構造』
関節包の内部には下顎窩があり、下顎窩の前方には関節結節が存在する。
下顎骨とこれら側頭骨との間に関節円板が挟まれて状態になっている。
この関節円板は円板として独立しているわけではなく、前方は外側翼突筋と後方は円板後部結合組織と連続して繋がっている。
『関節円板』
・線維軟骨であり、周縁部を除き血管神経を欠く。
・内外側端は下顎頭内外側極に付着する。
・上、下関節腔を分離する→ 下関節腔:回転に関与する。
上関節腔:滑走に関与する。
二層部上層:閉口時の円板の後退に関与する。
『外側靭帯の役割』
回転運動時に外側靭帯が張った状態になり、その付着部が支点となって下顎頭が前下方に滑走する。
『食性と顎関節の構造』
顎関節の構造は食性と関係が深い。
草食動物:関節窩が浅く、側方運動での自由度が高い。(臼歯での臼磨に有利)
肉食動物:関節窩が深く(前方移動不可)、下顎頭が関節窩に深く入る。(補捉した餌を引き裂くのに有利)
雑食動物:上記の両方の性質を有する中間的な形態の関節窩をもつ。
咀嚼筋と下顎運動について
下顎運動に関わる咀嚼筋には、解剖学的に分類されるものは咬筋、側頭筋、内側翼突筋、
外側翼突筋である。
生理学的に分類されているものは解剖学的の4つ+顎舌骨筋、オトガイ舌骨筋、顎二腹筋
などの舌骨上筋群である。
機能(生理学)的分類として以下がある。
-
開口運動に関与する筋群
わずかな開口は、閉口筋群の弛緩や下顎骨の重量により生じる。
小さな開口(translocation)は、舌骨上筋群により生じる。(舌骨の位置固定:舌骨下筋群)
大きな開口(rotation)は、外側翼突筋により生じる。
-
閉口運動に関与する筋群
咬筋:咬合力を発揮する。(咀嚼力に関与する)
側頭筋と内側翼突筋:下顎位置の維持に関与する。
-
顎の前突運動に関与する筋群
外側翼突筋(両側):主力をなす。
咬筋と側頭筋と内側翼突筋:開口しないようにこれらの筋が軽く収縮して協力
- 後退運動に関与する筋群
両側の側頭筋(特に中腹と後腹):主力をなす。
-
側方運動に関与する筋群
側方運動とは咀嚼時の嚙みしめなどの時に、顎は咀嚼側に回転して対側の下顎頭が前下方に移動する。対側の外側翼突筋(主に下頭)と咀嚼側の側頭筋(主に後部)が関与する。
『側方運動とベネット運動』
ベネット運動とは、側方運動の際に作業側の顆頭が外側にやや偏位する運動のこと。
ベネット角とは、側方運動時に平衡側の下顎頭の示す運動路が水平面で正中矢状面となす角度のことであり、通常10~15度である。平均値は約14度である。
下顎位感覚(下顎の位置感覚について)
人は目で見なくても下顎の位置を知覚できるため、視覚に頼らなくても自分の口の開き具合を適切に調節して食べ物を口に入れることが可能である。(下顎の位置感覚)
下顎位の感覚(深部感覚の1つ)の構成は以下の3つである。
-
閉口筋の筋紡錘からの感覚
・人の閉口筋(咬筋など)や舌筋などで、多数の筋紡錘が存在している。
(開口筋群にはほとんど存在しない)
・閉口筋群内筋紡錘の一次終末、二次終末からの求心性信号はそれぞれIa線維、Ⅱ群線維が伝える。これらの線維の細胞体は三叉神経中脳路核に局在している。
Ia線維:筋が伸長される長さや速度の情報を伝える。
Ⅱ群線維:筋が伸長される長さの情報を伝える。
・閉口筋筋紡錘の錘内筋線維を支配するAγ運動神経の細胞体は三叉神経運動核に局在している。(錘外筋線維を支配するAα運動神経と同じ局在である。)
・四肢筋に比べて咀嚼筋ではゴルジ腱器官は極めて少ない。
↓
筋紡錘内の一次終末は伸長される長さや速度に敏感に反応(放電量が増加)することで、 開口度や開口速度の情報を中枢に伝える。
二次終末は伸長速度には敏感に反応しない。
-
顎関節からの感覚
顎関節からの感覚は下顎の位置と運動感覚に関与する。これは下顎運動速度や開口度の検出に貢献する。三叉神経第三枝(咬筋神経、深側頭神経の関節枝、耳介側頭神経)を介して脳に伝達する
顎関節の感覚受容器は機械受容器のルフィニ小体、パチニ小体、ゴルジ体や自由神経終末(関節の痛みに関与)などがある。
-
その他の感覚受容器からの感覚
顎関節の靭帯、咀嚼筋の筋膜。受動的な開口に応答する。
下顎位について
顎運動の範囲内にある上顎を基準とする下顎の位置のことである。
下顎頭の位置で決まる、上下顎歯列で規定される、その他の要因で規定される下顎位がある。
重要な下顎位として咬頭嵌合位、下顎安静位、中心咬合位などがある。
以下にこれらについての説明を記載していく。
『下顎安静位』
下顎安静位をほぼ一定に保てる理由として、閉口筋群と開口筋群との間の緊張感の均衡が保持されること、閉口筋群の姿勢反射によりその位置が維持されることがある。
下顎安静位の維持にかかわる要因として能動的要因と受動的要因がある。
『咬頭嵌合位』
上下顎の歯が対合歯と最大限に咬合して安定した状態となってるときの下顎位である。
特徴として、 ・個人差あり
・上下顎の歯が最大接触面積で咬合した状態
・上下顎歯列の咬合面形態に依存してきまる咬合位
・下顎頭の位置を何ら規定するものではない。必ずしも機能的に正しい下顎位でない
・正常有歯顎者では中心咬合位と同義
・再現性が高い下顎位
『中心咬合位』
一般に咬頭咬合位とほぼ同義で用いられる。
顎関節や咀嚼筋の機能とその調和する神経系が正常であり、かつ上下顎歯が咬頭嵌合位を取る上下顎の位置関係のことである。
『中心位(central relation)』
両側の下顎頭が前上方部で関節円板の最も薄い部分を介して関節結節の後斜面に対向している時の上下額の関係のこと
あるいは、下顎頭が関節円板の最薄部とともに下顎窩の前上方に位置し、関節結節に接している時の上下顎の位置関係のことである。
中心咬合位と中心位にズレがある場合は一致させることが歯科治療上重要とされる。