【歯科医師勉強・生理学】視覚(2)について
今回は以前学んだ「視覚1」の続きを学んでいきました!
まだ視覚1のブログを読んでいない方はまずは以下のリンクからそちらをご覧ください!
utti-memorandum.hatenablog.com
では早速見ていきましょう!
網膜について
網膜の各部にある神経節細胞から伸びる軸索は視神経となって、視神経乳頭から束になって眼球の外へ出る。この乳頭は視細胞を欠いていて光を受容できないために盲点
(マリオットの盲点)となる。眼前の1点を固視した状態で見えている範囲を視野といい、固視点から約15度外側に視細胞乳頭部に、対応する盲点がある。
また網膜は発生学的、解剖学的には脳の1部である。前脳の脳室壁が膨らんできて突出することで眼胞が形成され、その後眼杯となり、この眼杯の内側が網膜となる。
また網膜は10層から構成されている。
『視細胞』
視細胞はその外節の形態によって錐体と杆体に分けられる。外節には
数百から数千の円板が積み重なっており、円板の膜上には視物質が存在し、
視物質が光を吸収(光の受容)することで光応答の過程が開始される。
円板は外節の基部で生成されて徐々に先端へと移動して色素上皮細胞に
貪食される。軸索末端のシナプス終末から双極細胞や水平細胞へ情報を
出力する。
また、網膜及び聴覚系の神経細胞において持続的な開口放出に適した
特殊な構造を有するシナプスをリボンシナプスといい、シナプスの
アクティブゾーンにリボン状の構造とリボンの両サイドにシナプス小胞が
集積している様子が見られ、リボンには常時多数のシナプス小胞が係留
されてるために、通常のシナプスよりも大量の神経伝達物質の持続的な
放出が可能である。
物体を注視する時にその像が結ばれる位置を中心窩といい、注視点と中心窩を結ぶ線を
視軸という。中心窩には杆体がなく、錐体のみ存在する。中心窩を中心とする直径約2mmの部分が色素を含んで黄色く見えるために黄斑と呼ばれる。
錐体は明所視で色覚あり、中心窩で最も密度が高く,片目で数百万個ある。杆体は暗所視で色覚無し、中心窩にはなく中心窩周辺に分布する。片目で1億個ある。
『双極細胞、水平細胞、アマクリン細胞』
双極細胞は視細胞から入力を受けて神経節細胞へと出力する細胞である。水平細胞とアマクリン細胞の大半は抑制性のニューロンで、側方抑制による輪郭やピークの強調に働く。
また神経節細胞は双極細胞、アマクリン細胞から入力を受けて視神経を介して中枢へ情報を送る。多くの視細胞からの情報は一個の神経節細胞へ収束する。中心窩では錐体-双極
細胞神経節細胞の比率が1:1:1であるので中心窩では最も分解能が高く、中心窩に近づく程収束の度合いが小さくなる。また光の応答形式でON型細胞とOFF型細胞に分けられる。
神経節細胞に至るまでに色覚情報処理が行われる。神経節細胞の中に特殊な内因性光感受性網膜神経節細胞(第三の光受容細胞ipRGC)がある。
<補足>内因性光受容性網膜神経節細胞(ipRGC)
神経節細胞のうち0.2%は内因性光受容性網膜神経節細胞であり、メラノプシンという青色光を吸収する光感受性色素を含有している。機能としては①概日リズムの調節、②対光反射、③薄明視がある。また杆体や錐体は視覚のイメージ形成に関わっているが、ipRGCは非イメージ形成に関わっている(視力に関係なし)とされてる。
『色素上皮細胞』
色素上皮細胞はメラニン色素を含み、光の散乱を防ぐ。視細胞へビタミンAのアルデヒドである11-cis-レチナールを供給する。ビタミンAが不足するとレチナールが作られず、
視物質を合成できなくなって夜盲症となる。視細胞外節の円板の貪食を行って古い円板を新しいものへ入れ替える。
『ミュラー細胞』
網膜の神経線維層から外顆粒層に至る巨大なグリア細胞であり、細胞同士の接着により
内境界膜と外境界膜を形成している。機能として網膜の構造の維持、神経伝達物質の回収、細胞外のK⁺濃度の調節がある。
視細胞による光の受容について
視物質はタンパク質であるオプシンと、杆体・錐体に共通する発色団の11-cis-レチナールからなる。杆体視物質は杆体オプシンと発色団からなるロドプシンであり、錐体視物質は3種類の錐体オプシンと発色団からなるヨドプシンである。錐体オプシンには、吸収する光の波長が異なる短波長・中波長・長波長感受オプシンがあり、それぞれを含む錐体をS錐体(青)、M錐体(緑)、L錐体(赤)という。
『光受容機構』
光量子が視物質に吸収されてから電気信号に変換されるまでの過程を光受容機構という。
視細胞は光を受容していないときには持続的に脱分極を行ってグルタミン酸を放出する。
光を受容するとGタンパク質であるトランスデューシンが活性化することでホスホジエステラーゼが活性化されることでcGMP濃度が低下してcGMP依存性陽イオンチャネルの開口確率が下がって細胞が過分極してグルタミン酸の放出が減少する。
『明所視と暗所視での視力』
明所視では中心窩で最も視力がよい。これは中心窩で最も錐体細胞の密度が
高いからである。逆に暗所視では中心窩の視力が低く周辺部の視力が高い。
<補足>
点滅する光で刺激する場合にその頻度が低いと光がちらつくがある程度以上の頻度になると連続的な光に見える。この時の最小の頻度を臨界融合頻度という。
『色覚と色情報の処理』
色覚とは色の3要素である色相、彩度、明度を感じることであり、色相は色や光の波長、
彩度は色の純粋さ、明度は明るさや光の物理的エネルギー量である。光の3原色は赤、青、緑であり、3原色を感知する3つの錐体(赤・青・緑錐体)がある。
錐体は強い光を受容し、色を識別できる。杆体は吸収極大が約500nmで弱い光を受容できるが、色は識別できない。
また、視細胞の錐体で3原色に分解される過程を3色過程といい、この過程で3原色に分解された色情報が対色系に信号が整理される過程を反対色過程という。
『色覚異常』
先天性色覚異常は、多くが錐体オプシンの異常であり、両眼性で視力や視野は正常である。
赤、緑オプシン遺伝子はX染色体の遺伝子であるため、男性の5%と男性に多く見られる。
先天性色覚異常の中で最も頻度が高くて、伴性劣性遺伝である。
後天性色覚異常は、重度の白内障、網膜疾患、視覚野損傷などにより起こる。S錐体は数が少ないために網膜疾患によって第三色盲になりやすい。
眼球運動について
強膜外表面には6つの外眼筋が付着しており、これらが協調して眼球を動かす。
中心窩に結像するように眼球を回転させる。水平方向では内側直筋・外側直筋、
上方向では上直筋・下斜筋、下方向では下直筋、上斜筋が関係する。
眼前の物体を注視する時には左右の眼球が内転して視軸が1点に集まる輻輳が 図
おき、遠方の物体を注視する時には両眼が外転して視軸が外方へ向かう開散が
おき、両眼の運動が協調できずに左右の眼の像がずれて重なって見えることを
複視という。
注視点が別のところへ急激に移動するときに見られる眼球運動を急速眼球運動といい、
ゆっくり動くものを注視する時に見られる眼球運動を滑動眼球運動という。
また外界が大きく動く時、例えば電車内でぼんやりと車窓から景色を眺めている時には、
流れていく風景を追う滑動眼球運動(緩徐相)と、リセットのための緩徐相とは逆向きの
急速眼球運動(急速相)が繰り返され、これを視覚運動性眼振という。
『眼電図』
眼球には前極(角膜層)を負とする数mVの電位差である角膜網膜電位が存在していることから、眼窩の上下と左右の皮膚に電極を貼付して、各組の電極間の電位差を記録することで眼球の動きを解析できる。これを眼電図という。