【歯科医師勉強・生理学】体性感覚(2)について
今回は以前の続きの生理学の体性感覚について学んでいきました!
まだ前回の内容を読んでいない方は下のリンクから是非お読みください!
utti-memorandum.hatenablog.com
では早速見ていきましょう!
痛みの心理学的な影響について
弁別的様相;侵害刺激の場所、刺激時間、刺激強度の弁別に必要な性質
情動的様相:自律神経応答を伴う。痛みの場所、強度、時間などの弁別が悪く、曖昧な性質
認知的様相:過去に経験した痛みと現在の痛みを比較し、痛みの性質を弁別して痛みを評価、認識するための性質。高次の脳機能が関与する。
痛みについて
正常組織の疼痛である侵害受容性疼痛と、病的組織の疼痛である病的疼痛がある。
侵害受容性疼痛は、侵害刺激によって引き起こされる痛みであり、痛みの場所や強度の情報
を伝えるための痛みであり、生体の生存に不可欠な痛みである。
病的疼痛は、神経損傷後に引き起こされる痛みの神経障害性疼痛や、慢性炎症によって引き
起こされる痛みの慢性炎症性疼痛がある。これらは生体に有益な情報をもたらさない不必
要な痛みである。
(参考)先天性無痛症
常染色体劣性遺伝(NGFBの遺伝子変異)により、先天的に無髄C線維を欠くために全身
の温度核と痛覚が消失する。これにより末梢の侵害受容情報が中枢に送られないために
組織損傷を検出できず、口腔内に咬傷や骨折を繰り返す。感染による痛みがわからない為
に指が壊死を起こす場合も多い。敗血症などの生命のリスクが高い。
⇒痛みの感覚は生体の防御システムとして極めて重要である。
『侵害受容性疼痛の分類』
一次痛:針で刺されたような鋭い痛みで潜時が速く局在性も明瞭である。
Aδ線維(細い有髄線維)
二次痛:一次痛に続く鈍い痛みである。C線維(無髄線維)
『ASICsについて』
酸感受性イオンチャネル(ASICs)は組織の㏗低下により直接開く陽イオンチャネルである。
炎症、虚血、感染症、腫瘍など痛みを伴う病態において病変部位の㏗は低下して組織は酸性化する。細胞外プロトンはASICsを活性化して侵害受容性疼痛が生じる。
ENaC/Degスーパーファミリーに属している電位非依存性Na⁺チャネルで
細胞外のプロトン(H⁺)が結合することによりチャネルが開いて細胞外から細胞内にNa⁺やCa⁺が流れて脱分極することで侵害受容性疼痛が生じる。
『侵害刺激を受容するイオンチャネルの作用機序について』
侵害刺激がTRPチャネルやASICsによって受容されて、Na⁺やCa⁺が細胞外から細胞内に流入することで脱分極を引き起こす。これにより電位依存性Na⁺チャネルが活性化して 活動電位が発生する(侵害刺激が伝わっていく)。末梢神経に発生する活動電位の頻度は、 刺激強度の増加に伴って増加する。
『炎症、組織損傷時の侵害受容性疼痛に関与する受容体について』
生理的状態での侵害受容性疼痛はTRPチャネルやASICによって誘発されるが、
炎症、組織損傷時の侵害受容性疼痛は、P物質を受容するNK-1受容体・プロスタグランジン受容体・キニンを受容するブラジキニン受容体・ATPを受容するプリン受容体といった代謝型受容体によって誘発される。代謝型受容体によって炎症や組織損傷時末梢神経の 興奮性を高める。
「参考」痛みの増強機構
TRPV1受容体は正常では43℃以上で活性化されるが、炎症が起こりATPやブラジキニンなどが放出されるとブラジキニン受容体の活性化によりTRPV1がPKCによってリン酸化される。その結果TRPV1が36℃~37℃でも活性化されるようになり、体温でも活性化されるため慢性疼痛となる。これを末梢性感作という。(感作:刺激に対する反応が増大する)
『受容器電位とインパルスについて』
受容器に侵害刺激が加えられると、神経の末端部分には受容器電位(起動電位)が
発生し、電位が閾値を超えるとインパルス(活動電位)が引き起こされる。
侵害受容器では受容器そのものが刺激の受容に関与することから、受容器電位と 図
起動電位は同一のものと考えられる。C線維の熱刺激の閾値43℃つまりTRPV1の
閾値、熱刺激強度はインパルス頻度に変換(符号化)されて上位中枢へ伝達されていく。
『侵害刺激に反応する受容器』
高閾値機械受容器:皮膚を損傷するような強い機械的刺激にのみ反応する
熱侵害受容器:熱刺激に対して強い反応を示す。
ポリモーダル受容器:機械刺激、熱刺激、発痛物質(化学刺激)など種類の異なる複数の 刺激に対して反応する。
『軸索反射について』
分岐した末梢神経末端部の一部の神経線維が刺激を受けると逆方向性のインパルスが発生
して、分岐したもう一方の枝に順行性の活動電位が生じて神経線維末端部からP物質や
カルシトニン遺伝子関連物質CGRPなどの神経ペプチドが放出されて周囲に存在する血管
の透過性が増すという反射。軸索側枝を介して起こるため中枢の無い反射である。
脊髄後角における一次感覚ニューロンの投射様式について
脊髄の灰白質は細胞の大きさ、形、密度から10層(Ⅰ~Ⅹ層)に分類され、
感覚ニューロンが投射する脊髄後角は6層からなる。C線維は後角の第Ⅱ層に、
Aδ線維は第Ⅰ層と深層にそれぞれ投射して二次ニューロンとシナプスを形成してる。
脊髄後角ニューロンは、上位中枢に情報を伝える投射ニューロン、脊髄内の他の
脊髄後角ニューロンの種類
特異的侵害受容ニューロン:侵害刺激にのみ反応する。刺激強度変化に対するインパル
ス 頻度変化が緩慢で受容野が狭い。第Ⅰ、Ⅱ層にある。
広作動域ニューロン:侵害、非侵害刺激の両方に反応。刺激強度変化に対するインパルス
頻度が変化しやすい。受容野が広い。第Ⅲ~Ⅵ層にある。
これらの侵害受容ニューロンは脊髄だけでなくより上位の視床や大脳皮質においても検出される。
『痛みの上行路について』
内側系は脊髄後角から視床の髄版内核や正中中心核に投射し、大脳辺縁系に投射する。
外側系は脊髄後角から視床の後外側腹側核(VPL)に投射し、大脳皮質の一次体制感覚野に
投射する。
また大脳辺縁系は扁桃体や海馬体からなり、海馬と扁桃体はそれぞれ記憶と情動の発現に
重要な場であるため、大脳辺縁系に投射する上行路は情動に関わっている。