うってぃの備忘録

税理士資格取得を目指す歯学部生の日常です!

【歯科医師勉強・生理学】顎運動・顎反射(2)

今回は前回の続きとして顎運動・顎反射(2)について学んでいきました!

前回の記事をまだよんでいない人は以下のリンクから是非ご覧ください!

 

utti-memorandum.hatenablog.com

 

では早速見ていきましょう!

 

下顎の限界運動について

歯、顎関節、骨、筋肉および靭帯等により、下顎の運動範囲には自ずと限界があり、これを下顎の限界運動という。

また下顎を開閉、左右側方、前後に最大限動かした(限界運動)時の下顎前歯部の運動範囲は菱形の立体の範囲内となる。この立体を菱形柱またはポッセルトの図形という。

下顎頭が前に行くときには1(咬頭嵌合位)から2(切端咬合位)に行き、3(最前方位)まで行く。

下顎頭が後退するときには1(咬頭嵌合位)から5(最後方咬合位)に行き、6(最大蝶番開口位)に行って、4(最大開口位)に行く。

 

ポッセルトの図形における矢状断面を構成する各限界運動経路の名称について

(A)前進(後退)運動路

①の最後方咬合位から上下歯の接触を維持したまま②の咬頭嵌合位や③の切端咬合位を経て再前方咬合位に至る経路のこと。後退時には逆方向

 

(B)前方開閉口運動路

④の最前方咬合位から開口を始めて⑦の最大開口位に至る経路のこと。

 

(C)習慣性開閉運動路

②の咬頭嵌合位からの開閉運動路のこと。日常的な運動はこの経路にて行われる。⑤の下顎安静位はこの経路上に位置する。

 

(D)終末蝶番運動路

①の最後方咬合位から開口を始め、⑥の最大蝶番開口位に至る経路のこと。下顎頭が下顎窩の後方に位置して移動せずに回転のみが行われる経路である。

 

(E)後方開閉口運動路

⑥の最大蝶番開口位からさらに開口して⑦の最大開口位に到達する経路のこと。下顎頭の前突を伴う。

 

ゴシックアーチについて

下顎限界運動を水平面に投射すると、菱形の側方限界運動路ゴシックアーチ)となる。

1の最後方咬合位はゴシックアーチの頂点であり、アペックスともいう

1から左または右に進んで⑦や⑧に行く経路を限界側方運動路という。

また2から左または右に進んで⑦や⑧に行く経路を習慣性側方運動路という。

 

『ポッセルトの図形の臨床上の意義』

・咬合記録や咬合再現の基準となる下顎位や顎運動を評価できること。

・下顎の運動能の診断基準となる。

 

下顎運動の調節機構について

下顎が咀嚼・嚥下・会話などの目的に応じて巧妙に運動ができる理由として、

口腔あるいは口腔周囲の感覚情報をもとに顎運動は中枢神経や末梢神経により巧妙に調節を受けるため、神経系の働きによって咀嚼筋が収縮するためである。

 

『下顎の随意運動の中枢機序』

感覚情報などをもとに大脳皮質の高次運動野で形成されたプランが一次運動野からの運動指令となる。この運動指令が下位の運動中枢に伝達されて実行される(咀嚼筋の収縮など)。

これらの際に、小脳は大脳から送られてきた大まかな運動指令を細かく調整して、下位の 運動中枢に伝える役割を担う。

そして食物の摂取によって誘発される口腔の粘膜や歯の触覚・圧覚および顎運動によって咀嚼の各ステージに適合した運動ができるように中枢神経系の各レベルで運動指令がフィードバック制御される。

 

『顎運動に関わる脳領域』

・大脳皮質咀嚼野は、連続的に電気刺激をすることで顎や舌のリズミカルな運動を誘発する領域であり、主要な領域として運動前野最外側の主咀嚼野や、口腔顔面領域の一次運動野がある。これらの領域は咀嚼の「開始・遂行・終了」や顎運動自体の調節に関与している。

 

大脳基底核は、随意運動発現に必要不可欠な領域で、大脳皮質下に存在する神経細胞の集合体である。大脳基底核からは一次運動野へ運動指令を送るので、随意運動の準備、開始、制御など運動プログラム作成において重要で、咀嚼運動の誘発や円滑な遂行に役立つ。

扁桃体は、味覚や嗅覚の入力を受けるとともに情動に関与する部位であるので情動や摂食行動の発現に重要である。扁桃体には直接的に、あるいは間接的に三叉神経運動核に投射するニューロンがあり、顎運動の制御自体にも関わる。

 

脳幹中脳・橋・延髄からなる。橋・延髄では咀嚼中枢や嚥下中枢、嘔吐中枢が局在している。また大脳皮質や大脳基底核扁桃体などの高次脳のニューロンが直接/間接的に 接続している。三叉神経運動核に投射するニューロンが存在しており顎運動を制御する。これは顎反射の反射弓を構成しており、咀嚼の中枢性パターンの形成に関わっている。

 

小脳は運動制御に重要な役割を担う領域であり、顎顔面口腔領域からも豊富な入力がある。これらの感覚情報が小脳内で処理されて顎運動の調節に関与する。具体的には大脳から送られてきた大まかな運動指令を細かく調整して下位の運動中枢に伝える役割を担う。

 

顎反射について

顎反射は脳幹反射の一部であり、口腔内外に存在する受容器への刺激によって生じた感覚

情報が中枢において三叉神経運動核に伝達されて、効果器である開閉口筋に不随意性に生

じる定型的な反応である。

これは咀嚼時の急激な出来事に瞬時に対応する。反射効果により閉口反射と開口反射に 

大別される。

三叉神経核

三叉神経運動核群は、咀嚼筋の収縮制御は三叉神経運動核の支配であり、顎運動の主たる制

御機構に欠かせないものとなっている。顎口腔顔面領域のほとんどの体性感覚情報は三叉

神経感覚群に入力している。三叉神経感覚群には三叉神経中脳路核三叉神経主感覚核

三叉神経脊髄路核がある。三叉神経神経核群への入力の特徴は感覚別であり以下参照。

 

 

『下顎張反射』

下顎張反射は下顎が急激に下がることで閉口筋に収縮が誘発される伸張反射のことである。

これの誘発刺激は閉口筋の伸張である。この刺激の受容器は閉口筋内の筋紡錘である。この

受容器からの情報を中枢へ伝える求心性線維には、筋紡錘の一次終末にあるla線維と筋紡

錘の二次終末にあるll群線維がある。これらの求心性線維は脳幹内にある三叉神経中脳路

を形成しており、求心性線維の入力先は同じ脳幹内にある三叉神経運動核である。

三叉神経運動核からはニューロン(α運動ニューロン)が神経の軸索を伸ばして遠心性

神経として脳幹部から出ている。反射の効果としては、運動神経が閉口筋を興奮させるため

閉口筋の収縮の反射が誘導される。

この反射の意義は下顎の位置調整であり、下顎安静位の形成に関与している。

その他の特徴としてはシナプス反射であることである。これにより咬筋の誘発筋電図で

は下顎張反射により10ミリ以内にH波が認められるのである。自己受容性反射でもある。

また、閉口筋の収縮を誘発するのみであり、開口筋に拮抗性抑制を誘発しないので、居眠り

の際は下顎張反射が起こりにくくなるので口が開いてしまう。

【歯科医師勉強・生理学】顎運動・顎反射(1)

今回は顎運動と顎反射について学んでいきました!

運動や反射に何の筋や神経が関係しているかなども大切だったので少し解剖学の知識も必要となりました。

では早速見ていきましょう!

 

顎関節の構造について

頭蓋骨と下顎骨を繋ぐ靭帯には外側靭帯副靭帯があり、副靭帯には茎突下顎靭帯蝶下顎靭帯がある。

 

『顎関節の内部構造』

関節包の内部には下顎窩があり、下顎窩の前方には関節結節が存在する。

下顎骨とこれら側頭骨との間に関節円板が挟まれて状態になっている。

この関節円板は円板として独立しているわけではなく、前方は外側翼突筋と後方は円板後部結合組織と連続して繋がっている。

 

『関節円板』

・線維軟骨であり、周縁部を除き血管神経を欠く。

・内外側端は下顎頭内外側極に付着する。

・上、下関節腔を分離する→ 下関節腔:回転に関与する。

              上関節腔:滑走に関与する。

              二層部上層:閉口時の円板の後退に関与する。

 

『外側靭帯の役割』

回転運動時に外側靭帯が張った状態になり、その付着部が支点となって下顎頭が前下方に滑走する。

 

『食性と顎関節の構造』

顎関節の構造は食性と関係が深い。

草食動物:関節窩が浅く、側方運動での自由度が高い。(臼歯での臼磨に有利)

肉食動物:関節窩が深く(前方移動不可)、下顎頭が関節窩に深く入る。(補捉した餌を引き裂くのに有利)

雑食動物:上記の両方の性質を有する中間的な形態の関節窩をもつ。

 

 

咀嚼筋と下顎運動について

下顎運動に関わる咀嚼筋には、解剖学的に分類されるものは咬筋、側頭筋、内側翼突筋、

外側翼突筋である。

生理学的に分類されているものは解剖学的の4つ+顎舌骨筋、オトガイ舌骨筋、顎二腹筋

などの舌骨上筋群である。

機能(生理学)的分類として以下がある。

  • 開口運動に関与する筋群

わずかな開口は、閉口筋群の弛緩や下顎骨の重量により生じる。

小さな開口(translocation)は、舌骨上筋群により生じる。(舌骨の位置固定:舌骨下筋群)

大きな開口(rotation)は、外側翼突筋により生じる。

 

  • 閉口運動に関与する筋群

咬筋:咬合力を発揮する。(咀嚼力に関与する)

側頭筋と内側翼突筋:下顎位置の維持に関与する。

 

  • 顎の前突運動に関与する筋群

外側翼突筋(両側):主力をなす。

咬筋と側頭筋と内側翼突筋:開口しないようにこれらの筋が軽く収縮して協力

 

  • 後退運動に関与する筋群

両側の側頭筋(特に中腹と後腹):主力をなす。

 

  • 側方運動に関与する筋群

側方運動とは咀嚼時の嚙みしめなどの時に、顎は咀嚼側に回転して対側の下顎頭が前下方に移動する。対側の外側翼突筋(主に下頭)と咀嚼側の側頭筋(主に後部)が関与する。

 

『側方運動とベネット運動』

ベネット運動とは、側方運動の際に作業側の顆頭が外側にやや偏位する運動のこと。

ベネット角とは、側方運動時に平衡側の下顎頭の示す運動路が水平面で正中矢状面となす角度のことであり、通常10~15度である。平均値は約14度である。

 

下顎位感覚(下顎の位置感覚について)

人は目で見なくても下顎の位置を知覚できるため、視覚に頼らなくても自分の口の開き具合を適切に調節して食べ物を口に入れることが可能である。(下顎の位置感覚)

下顎位の感覚(深部感覚の1つ)の構成は以下の3つである。

 

 

  • 閉口筋の筋紡錘からの感覚

・人の閉口筋(咬筋など)や舌筋などで、多数の筋紡錘が存在している。

(開口筋群にはほとんど存在しない)

・閉口筋群内筋紡錘の一次終末二次終末からの求心性信号はそれぞれIa線維Ⅱ群線維が伝える。これらの線維の細胞体は三叉神経中脳路核に局在している。

Ia線維:筋が伸長される長さや速度の情報を伝える。

Ⅱ群線維:筋が伸長される長さの情報を伝える。

・閉口筋筋紡錘の錘内筋線維を支配するAγ運動神経の細胞体は三叉神経運動核に局在している。(錘外筋線維を支配するAα運動神経と同じ局在である。)

・四肢筋に比べて咀嚼筋ではゴルジ腱器官は極めて少ない。

                    ↓

筋紡錘内の一次終末は伸長される長さや速度に敏感に反応(放電量が増加)することで、 開口度や開口速度の情報を中枢に伝える

二次終末は伸長速度には敏感に反応しない

 

  • 顎関節からの感覚

顎関節からの感覚は下顎の位置と運動感覚に関与する。これは下顎運動速度や開口度の検出に貢献する。三叉神経第三枝(咬筋神経、深側頭神経の関節枝、耳介側頭神経)を介して脳に伝達する

顎関節の感覚受容器は機械受容器のルフィニ小体、パチニ小体、ゴルジ体自由神経終末(関節の痛みに関与)などがある。

 

  • その他の感覚受容器からの感覚

顎関節の靭帯、咀嚼筋の筋膜。受動的な開口に応答する。

 

下顎位について

顎運動の範囲内にある上顎を基準とする下顎の位置のことである。

下顎頭の位置で決まる、上下顎歯列で規定される、その他の要因で規定される下顎位がある。

重要な下顎位として咬頭嵌合位、下顎安静位、中心咬合位などがある。

以下にこれらについての説明を記載していく。

 

下顎安静位

下顎安静位をほぼ一定に保てる理由として、閉口筋群と開口筋群との間の緊張感の均衡が保持されること、閉口筋群の姿勢反射によりその位置が維持されることがある。

下顎安静位の維持にかかわる要因として能動的要因受動的要因がある。

 

咬頭嵌合位

上下顎の歯が対合歯と最大限に咬合して安定した状態となってるときの下顎位である。

特徴として、 ・個人差あり

       ・上下顎の歯が最大接触面積で咬合した状態

       ・上下顎歯列の咬合面形態に依存してきまる咬合位

       ・下顎頭の位置を何ら規定するものではない。必ずしも機能的に正しい下顎位でない

       ・正常有歯顎者では中心咬合位と同義

       ・再現性が高い下顎位

 

『中心咬合位』

一般に咬頭咬合位とほぼ同義で用いられる。

顎関節や咀嚼筋の機能とその調和する神経系が正常であり、かつ上下顎歯が咬頭嵌合位を取る上下顎の位置関係のことである。

『中心位(central relation)』

両側の下顎頭が前上方部で関節円板の最も薄い部分を介して関節結節の後斜面に対向している時の上下額の関係のこと

あるいは、下顎頭が関節円板の最薄部とともに下顎窩の前上方に位置し、関節結節に接している時の上下顎の位置関係のことである。

中心咬合位と中心位にズレがある場合は一致させることが歯科治療上重要とされる。

 

 

【歯科医師勉強・生理学】視覚(1)について

今回は「視覚」に関することを学んでいきました。どのように視覚を感じるのかというメカニズムを学ぶことが出来、眼球に関する構造も詳しく学ぶことができました!

では早速見ていきましょう!

 

下行性疼痛変調機構について

痛覚の経路には上行路だけでなく下行路も存在し、脊髄や延髄レベルで痛みの感受性を制御する神経機構があり、これを下行性疼痛変調機構という。

侵害情報は単純に末梢から上位中枢に伝えられるだけでなく上行する過程で様々な領域に情報を送っており、特に重要なのが下行性の投射経路である。下行性経路の中継核として

中脳水道周囲灰白質延髄吻腹側核(RVM)の大縫線核という領域がある。

中脳水道周囲灰白質は大脳皮質の広い領域からも入力を受けてRVMへ出力している。

RVMからは脊髄後角や三叉神経脊髄路核へ軸索投射があり、これらの領域に分布する侵害受容ニューロン活動を調節している。RVMの出力ニューロンON型細胞OFF型細胞およびニュートラル細胞の3種類に分類されている。

 

下行性の分布するニューロンセロトニンノルアドレナリンなどを含有しており、興奮するとセロトニンノルアドレナリンカテコラミンを神経終末部から放出して神経活動が変調される。またこれらのニューロンオピオイド系やGABA系と強い関係があり、侵害受容ニューロン活動調節に強く関与している。

 

 

(補足)オピオイドによる下行性抑制系の賦活化

モルヒネはGABAニューロンのμオピオイド受容体を介して

GABAニューロンを抑制する。OFF型細胞はGABAニューロン

抑制を受けてるため、脱抑制によって活性化(下行性抑制系の賦活化)  

し、痛覚伝達が遮断される。(痛覚抑制系の脱抑制による鎮痛作用)

モルヒネはON細胞のμオピオイド受容体に作用してON細胞の興奮を

抑制し、痛覚伝達が抑制される。(痛覚伝導系の抑制による鎮痛作用)

 

痛みの加齢変化について

加齢に伴って侵害受容性疼痛閾値上昇するが、慢性炎症や神経損傷により発症する慢性疼痛強く感じられる。これは、上行路と下行路の両方が障害されて上行路と下行路の機能バランスが崩れるためとされている。

このバランスが崩れる原因の、加齢に伴う神経系の生理的変化として以下がある。

「痛点やシナプス数の減少・神経細胞の脱落・髄鞘の消失・シナプス伝達効率の低下」

 

視覚について

可視光(波長:約380~780nm)を受容することで生じる感覚を視覚という。

視覚によって物体の形状・色・位置・姿勢・運動の情報とともに、意識には上らないものの、身体や頭部の姿勢制御、生体時計の調節に必要な情報も得ている。

 

眼球について

外界からの光は角膜、眼房水、水晶体、硝子体を順に透過して、網膜上の

視細胞(光受容細胞)で受容される。眼球の再外層は前方約1/6が角膜、  

後方の残りが強膜である。

 

(1)角膜

血管を欠き、眼房水と涙液から酸素や栄養を得る長毛様体神経

(三叉神経第一枝である眼神経の枝)などが密に自由神経終末を       

作っていて、痛覚・瞬目反射・流涙反射にかかわっている。

角膜の異常は屈折異常の原因となる。

 

(2)毛様体

毛様体内側には毛様体小体があり、水晶体とつながっている。毛様体の内部には毛様体筋があり、遠近調節を担っている。毛様体動脈より生じた濾液を眼房水とよび、毛様体上皮から後眼房へと分泌される。

 

(3)虹彩

毛様体から前内方へ伸びる部分で、目の色とは虹彩の色を指す。虹彩の模様は個体ごとに 異なるため個人識別に用いられることがある。虹彩の中央には瞳孔が開いており、眼球内方へ光が入射する。瞳孔径は交感神経支配の瞳孔散大筋と副交感神経支配の瞳孔括約筋に よって調節されて目に入る光の量を変化させることができる。

瞳孔が大きくなることを散瞳、小さくなることを縮瞳という。      

眼に光を照射すると両側性に縮眼が起こる。これを対光反射という。

脳死判定基準の1つとして対光反射消失が含まれている。

 

(4)眼房、眼房水

角膜と水晶体の間を眼房といい、虹彩によって前眼房と後眼房に

分けられる。毛様体上皮から分泌された眼房水は後眼房から前眼房を

経て前房隅角にある虹彩角膜角隙(フォンタナ腔)を通じて強膜静脈洞   

へ吸収される。眼圧は眼房水によって生じる圧力であり、緑内障

網膜神経節細胞の死滅によって視野異常が生じる疾患であり、

眼房水の吸収・排出が滞ることで眼房水が溜まって眼圧が上昇する

ことが主な原因となる。

 

(5)水晶体

瞳孔の後ろに位置しており、水晶体の辺縁は毛様体小体によって毛様体内面と結ばれており、毛様体筋の作用によって前後面の彎曲を変えて遠近調節を行う。加齢に伴って弾性と透明度が低下することで、それぞれ老視白内障を生じる。白内障は胎児感染、代謝性疾患、染色体異常などによって先天性に生じうる。

水晶体には透明のタンパク質であるクリスタリンがある。

 

(6)硝子体

水晶体と網膜の間を満たす無色透明のゼラチン様物質が硝子体膜で包まれており、眼球容積の約8割を占める。眼圧を維持し、眼球の形状と網膜の位置を保っている。

眼球の形状維持を行う

 

(7)網膜

眼球の壁の最内層にあり、視神経乳頭から虹彩の瞳孔縁まで存在する。

虹彩と毛様体を覆う部分を網膜盲部、それ以外の脈絡膜を覆う部分を  

網膜視部といい区別されるが、単に網膜という場合には網膜視部を

指すことが多い光の受容を行う。

 

遠近調節について

物体を明瞭に見るためには網膜上にその像を鮮明に結ぶ必要があり、水晶体の曲率を変えて屈折力を調節して網膜上に結像させることを遠近調節という。

鮮明に結像できる最も遠い点を遠点、最も近い点を近点という。

水晶体が毛様体小体によって外側へ引っ張られて扁平になってる状態(無調節状態)で、無限遠の物体の像が網膜上に結ばれる、つまり遠点が無限遠。(無限遠は被写体の距離が非常に遠方でピント調節が不要となる距離)

近くを見るときは、毛様体筋が収縮して毛様体小体が弛緩して、水晶体の厚さが増加する。(水晶体自身の弾性によって球形に向かって膨らむため)

 

屈折異常について

近視:遠方の物体が網膜より前で結像する状態で、近くは見えるが

   遠くは見えにくい。眼球の前後径が過大のため凹レンズで矯正

 

遠視:遠方の物体が網膜より後ろで結像する状態で、遠くは見えるが

   近くは見えにくい。眼球の前後径が過少のため凸レンズで矯正    

 

老視:加齢によって水晶体の弾性が低下して水晶体の屈折力低下

   近くが見えにくい。凸レンズで矯正する。

 

光が網膜上の一点に結像しない状態で、物がぶれて見えないシャープに見えない状態を 乱視という。角膜の曲率は水平方向よりも垂直方向で若干高いが、差が大きいと網膜上に鮮明に結像できない。これを正乱視といい、矯正には円環レンズを用いる。

角膜の外傷や変性などで生じた表面の凹凸によるものを不正乱視といい、コンタクトレンズを用いる矯正が必要となる。

 

 

視野、視力について

ある一点を注視し、視軸が固定されている状態で見ることができる範囲を視野という。

単眼視野は外方に長い卵円形である。眼の空間的な分解能を視力という。

一般的にはランドルト環を用いて計測される。切れ目の方向が認識できる最小の環の切れ目に対する視覚をdとすると、視力は1/dで表される。

【雑談】テスト期間で寝不足なった話(試験頑張った)

先週の木曜日に薬理学の試験があり、GWが開けてからの4日間ほど全力でテスト勉強してきたということもあり、金曜日はすごく眠かった( ¯꒳​¯ )ᐝ😴

 

「明日は全部オンデマンドだから学校に行かなくていいからいっぱい寝れる(งᐛ )ง」

 

というふうに木曜日テストが終わってから思っていました。

 

そしてテスト終わって友達と話していた時にあることを思い出してしまったんです

 

「明日健康診断あるくね?🙂」

 

 

しかもその健康診断は朝からある…

 

「ん?、寝れないってこと???🥲」

 

絶望しましたね笑

 

寝不足だけでなくテスト疲れもあることから結構疲労が溜まってる状態での早起きほど辛いものはありません、しかも健康診断の後にバイトもある、泣ける…

 

「健康診断行くせいで逆に不健康なるやん😇」

 

本気でそんなふうに思っちゃいました笑

 

そんなわけで土曜日は12時間以上寝る🙋‍♂️って自分の中で宣言してたけど結局13時間寝ました☻

 

テスト前は税理士の勉強もストップしてたので、巻き返すためにも今日から頑張ります🔥

 

睡眠大事、寝不足ダメ🙅‍♂️

 

【歯科医師勉強・生理学】口腔体性感覚(2)について

今回は生理学の口腔体性感覚について学んでいきました!

口腔領域における痛みがどのようなメカニズムで生じているのかを学ぶことができ、とても興味深かったです!

まだ以前の記事を読んでいない人はまずは以下のリンクからそちらを是非ご覧ください!

 

utti-memorandum.hatenablog.com

 

それでは早速見ていきましょう!

 

歯根膜について

(補足)歯根膜

歯と歯槽骨の間にあり、歯根膜線維(コラーゲン線維)と疎な結合組織からなる。

感覚受容器(ルフィニ小体と自由神経終末)がある。

歯に力をかけると歯の動揺(生理的動揺)はごくわずかである。

歯が抜けるとルフィニ小体は消失し、歯を再移植しても再生しない。(

ネズミではルフィニ小体は再生する。

 

『機械刺激に対する受容器からの反応』

受容器の存在部位により力に応答する方向があり、歯根膜線維にかかる    

張力によって決まる。どの部位の線維に張力がかかるかによる。

(↑ルフィニ小体の応答の話)

また、歯根膜感覚の生理的特性では順応性強度応答性がある。

順応性:順応性が神経によって異なる。

 速順応型は、歯を押した瞬間のみ応答

 遅順応型は、歯を押している間、持続的に応答

 中間型

強度応答性;刺激強度に対する応答が異なり、強い力を加えると反応が緩やかになるタイプと、強い力でも反応が緩やかにならないタイプがある。

 

(参考)単一ユニット記録(細胞外記録法

高いインピーダンスの金属微小電極などを単一の神経細胞に接近させて、その記録細胞に発生する活動電位を反映した細胞外の微弱な電位変化を測定することを単一ユニット記録という。細胞内記録とは異なってシナプス後電位など閾値下の膜電位変化は観察できない。

 

 

『歯根膜に存在する感覚受容器』

歯根膜は二重神経支配である。

・歯根膜(根尖部)→求心性線維(三叉神経)→三叉神経節細胞体がある)→三叉神経感覚複合核→視床→大脳S1へ行く。 

機能としては識別的機能と刺激部位の同定がある。

・歯根膜(根尖部)→求心性線維(三叉神経)→三叉神経中脳路核細胞体がある)→三叉神経感覚複合核、三叉神経上核、三叉神経運動路核へ行く。 

機能としては咀嚼筋の反射的制御がある。

 

(補足)三叉神経中脳路核

機能として、閉口筋の筋紡錘と歯根膜から感覚情報を受け取って三叉神経運動核へ投射する。咀嚼などの反射的調節を行う。歯ぎしりに関係すると考えられてる。

 

『口腔・顔面の痛み』

歯痛は人が経験する最大の痛みとされており、歯の痛みには歯髄痛歯根膜痛がある。

歯髄痛:歯髄神経が興奮して起こる。歯髄痛にはしみる痛み炎症性の痛みがあり、  しみる痛みは冷水(温度変化)や浸透圧刺激により起こる。これらは動水力学説により起こるとされている。象牙芽細胞にはTRPチャネルやPiezo1チャネルなどが発現しており象牙芽細胞が活性化するとATPが放出されて周りの神経線維の受容体に結合して反応を起こす。炎症性の痛みについては下記参照

動水力学説について

熱や浸透圧が加えられると、むき出しになっている象牙質の

象牙細管の中の組織液が熱を伝えたり、浸透圧の影響を受けると、

象牙芽細胞が感知して活動電位を発生してしみる感覚として伝わっていく。  

象牙芽細胞にはTRPチャネルやPiezo1チャネルなどが発現しており、

活性化するとATPが放出されて周りの神経線維の受容体に結合して

反応を起こす。

 

(歯髄の炎症による歯痛)

歯髄炎症により血管透過性が亢進することで歯髄腔の内圧が亢進する。

その圧によってAδ、C線維の自由神経終末が興奮して痛みを起こす。

歯髄炎症により近傍の損傷された細胞(歯髄腔など)からH⁺、ATPが   

放出され、自由神経終末のTRPV1、ASICs(酸感受性チャネル)、P2X₃

受容体が刺激されて陽イオンが流れて神経興奮性が亢進して痛みを起こす。

歯髄炎症により炎症性エディエーターが放出(肥満細胞だとセロトニン

プロスタグランジン、ヒスタミン放出 マクロファージだとサイトカイン

神経成長因子、ブラジキニン放出)されることで自由神経終末が興奮して

痛みを起こす。

齲歯で細菌が感染してたら細菌からリポポリサッカライド(LPS)が放出されて

歯髄細胞に作用してサイトカインやサブスタンスP、CGRP放出することで炎症の悪化

が生じる。

また軸索反射が自由神経終末に伝播してサブスタンスPやCGRPやニューロキニンA

などが放出されることで免疫細胞が活性化や肥満細胞の機能的変化や血管拡張・機能的

亢進することで肥満細胞を刺激してPG、セロトニンヒスタミン放出、マクロファージ

増加などが起こり炎症を悪化させていく。

 

 

歯根膜痛:歯根膜の神経が興奮して起こる。歯根膜痛には、機械的刺激による圧迫痛と  炎症性の痛みがある。

     圧迫痛は矯正治療中によくある痛みである。歯根膜は温度受容には関与しない。痛みは専ら機械刺激により起こる。このような反応を起こすのは自由神経終末である(侵害受容器があるから)。自由神経終末のAδ、C線維とも遅順応性応答を示し、持続的に興奮する。

     炎症による痛みでは、炎症の原因として歯周病などにより歯根膜に炎症が波及して炎症性細胞から起炎性物質が出てきて、ずっと続くと自由神経終末が感作される。感作により機械刺激の刺激閾値が低下したり、自発発火の増加が起こる。これにより通常は痛みを起こさない弱い刺激に対しても鈍痛を生じるようになる。

 圧迫痛や炎症による痛みではAδ、C線維が三叉神経脊髄路核尾側亜核に入り、反対側

毛帯路核を通り、視床後内腹側核へ行き、大脳皮質S1へ行く。

 

口腔粘膜・顔面皮膚の痛みについて

口腔粘膜と顔面の痛みの機序は同じであり、顔面皮膚は体幹皮膚と同様の機序である。

具体的には自由神経終末のAδ、C線維が三叉神経脊髄尾側亜核に入っていく。

口腔粘膜の場合ではおいしいお茶の温度は80℃(皮膚だとお風呂の適度は43℃)である。

侵害受容器に差はないが、これは熱刺激により体性自律神経反射が起こって唾液分泌が 亢進し、温度が下がることによる。唾液分泌が抑制された場合には粘膜損傷が起きやすく、痛みが誘発される。

 

顎関節の痛みについて

顎関節症は女性に多い。顎関節の痛みの線維はAδ、C線維であり、下顎頭にあるが中央部にほとんどなく周辺に多数分布する。顎関節の原因としては筋肉や関節自体だったりし、

顎関節は二頭関節であるため常に左右が同時に動くので機械刺激を頻繫に受ける。

関節頭に問題があると、片側の病変であっても運動が刺激となり痛みを引き起こす。これらの痛みは鈍い痛みであり長引く不快な痛みである。

この痛みの経路は、三叉神経節から三叉神経脊髄路尾側亜核、視床VPM、大脳S1となる。

治療としては痛み止めによる対症療法のみである。

 

舌の痛みについて

舌は味覚、触覚、温度覚、痛みを感じる。自由神経終末のAδ、C線維がある。

舌の痛みには粘膜の痛み舌筋の痛みがあり、粘膜の痛みでは侵害受容線維が  図

粘膜下、味細胞周辺に分布しており痛みを感じる。

舌筋の痛み深部痛であり鈍痛で、場所の同定は困難である。

顎口腔顔面の筋痛について

筋の痛みには筋肉内(Aδ、C線維)と筋膜(Aδ、C線維)がある。

強い機械刺激や熱刺激などの侵害刺激が、筋肉内や筋膜の自由神経終末の侵害受容器を 興奮させて痛みを起こしてくる。筋の痛みの特徴としては持続的な痛みである。

また筋緊張状態が続くと筋線維に小さな損傷が起こり、そこからATPやブラジキニンを 放出(もしくは損傷を受けてない筋線維からATPが放出)されて、自由神経終末のP2X 受容器に結合して痛みが生じる。

 

頭痛について

脳は実質痛みを感じない。硬膜に感覚神経(Aδ、C線維)が豊富に存在しており頭痛を  生じる。この感覚神経も自由神経終末であり、TRPV1、A1、M8が熱刺激や化学刺激で活性化される。

何らかの理由で三叉神経終末より神経ペプチド(CGRP、SP、ニューロキニンAなど)が放出されて(もしくはセロトニン枯渇により)血管が拡張し、血管に分布している痛覚感受性神経を刺激して頭痛を生じることもある。

通常は器質的頭痛くも膜下出血、脳腫瘍、モヤモヤ病、脳血種など)や、機能的頭痛   (片頭痛、筋緊張性頭痛)などによる。

 

加齢と口腔の痛みについて

加齢により唾液量が減少すると、口腔乾燥が起こり口腔細菌が増加して歯肉炎が生じたり歯周病が早まったりして歯肉の痛みが生じるようになる。

また唾液量が減少することで傷が治りにくくなり、粘膜の損傷による痛みが生じる。

逆に加齢に伴って象牙質が増加することで歯髄腔が狭窄して隙間が減って、しみる痛みが 低下する

【歯科医師勉強・生理学】嗅覚と味覚(3)

今回はこれまでの嗅覚と味覚の続きについて学んでいきました!

匂いの不思議についていろいろと学べたので、前回までの内容をまだ見ていない人は下のリンクから是非ご覧ください!

 

utti-memorandum.hatenablog.com

 

utti-memorandum.hatenablog.com

 

では早速見ていきましょう!

 

生物は、所有する味覚受容体によって食行動が規定されており、どのような味覚受容体を持つかによってその生物にとっての「おいしいもの」が決まる。

また、味覚は絶対的な感覚ではなく、体液組成の変化により味覚の感受性も変化する。

近年では一部の味蕾細胞に摂食関連ホルモンの受容体の発現を確認され、ホルモンが味応答に影響を与えることが分かった。

 

嗅覚の役割・特徴について

遠隔性化学感覚の役割には食料の探知・異性の探知・親子の認識・天敵の存在・強力な記憶・快/不快の情動と感情を誘導がある。

また嗅覚の特徴として、個人差が大きい・順応が早い・訓練により識別能力が上がる・高感度の識別能があるなどがある。

 

嗅覚の一般的性質について

『匂い物質と基本臭について』

匂い物質:分子量20~400以下の揮発性化合物である。匂いの質は非常に複雑でうまく  分類出来ないが、分子の濃度や構造の違いが匂いに影響することは分かっている。

匂いの性質:濃度の変化や混合臭となることにより匂いの質が変化する。人間の嗅覚は成分濃度の対数に比例する。

 

悪臭物質の種類として硫黄化合物、窒素化合物、低級脂肪酸アルデヒド類、炭化水素類が

ある。

嗅覚受容体は、似た構造をもつ複数の匂い分子に結合することができ、またほとんどの匂い

分子は何種類かの受容体を刺激できる

 

嗅覚の一般的性質について

匂いの閾値に影響するものとして測定方法、測定技術、鼻粘膜の血管の収縮、鼻粘膜の分泌

の程度、月経周期、加齢、喫煙習慣などがある。

 

『口臭について』

口臭の原因として嫌気性バクテリアが生じる硫化水素メルカプタエタンがある。

これらは、唾液分泌減少・薬物・喫煙やアルコールを要因として起こる口腔乾燥による   

低酸素状態によってバクテリア活性化することで産生される。

 

『嗅上皮と嗅覚の受容』

嗅上皮にある約600万個ある嗅細胞で匂い物質を感受する。

嗅細胞には細い長い樹状突起、嗅小胞、多数の嗅繊毛、無髄神経線維がある

無髄神経線維は嗅球の糸球体へ連絡する。吸気が上鼻道を通ることで匂い分子が嗅神経を

刺激することをオルソネーザル匂い知覚という。

 

嗅覚の受容と神経情報処理について

『匂い分子の受容と細胞内シグナル伝達』

匂い受容体である7回膜貫通型Gタンパク質共役型受容体は、嗅覚特異的Gタンパク質α

サブユニットと共役する。これはアデニル酸シクラーゼを活性化させてcAMP産生を

亢進させることでcAMP依存性陽イオンチャネルが活性化し、Na⁺やCa⁺が細胞外から

細胞内に流入する。そして閾上刺激で活動電位が発生して糸球体へ伝達される。

 

『匂い情報の中枢処理について』

1細胞-1受容体規則:嗅細胞の1つ1つはそれぞれ396種類ある受容体から1種類を選んで発現することで、これが嗅細胞の応答特性を決定している。

1受容体-1糸球体規則:1つの糸球体に収束する嗅神経線維は同種の受容体を発現した  嗅細胞に由来することで、各種の匂いは嗅球で活動する糸球体の組み合わせで決まる。

 

『嗅覚中枢経路』

嗅細胞は神経細胞であり、神経細胞を伸ばす軸索が集まって嗅神経となる。

嗅神経は大脳嗅球の僧帽細胞房飾細胞(二次ニューロン)へ接続する。そして嗅皮質へ 行き、視床へ連絡して嗅覚の最高次中枢の大脳皮質嗅覚野へ行く。

【歯科医師勉強・生理学】体性感覚(2)について

今回は以前の続きの生理学の体性感覚について学んでいきました!

まだ前回の内容を読んでいない方は下のリンクから是非お読みください!

 

utti-memorandum.hatenablog.com

 

では早速見ていきましょう!

 

痛みの心理学的な影響について

弁別的様相;侵害刺激の場所、刺激時間、刺激強度の弁別に必要な性質

情動的様相:自律神経応答を伴う。痛みの場所、強度、時間などの弁別が悪く、曖昧な性質

認知的様相:過去に経験した痛みと現在の痛みを比較し、痛みの性質を弁別して痛みを評価、認識するための性質。高次の脳機能が関与する。

 

痛みについて

正常組織の疼痛である侵害受容性疼痛と、病的組織の疼痛である病的疼痛がある。

侵害受容性疼痛は、侵害刺激によって引き起こされる痛みであり、痛みの場所や強度の情報

を伝えるための痛みであり、生体の生存に不可欠な痛みである。

病的疼痛は、神経損傷後に引き起こされる痛みの神経障害性疼痛や、慢性炎症によって引き

起こされる痛みの慢性炎症性疼痛がある。これらは生体に有益な情報をもたらさない不必

要な痛みである。

 

(参考)先天性無痛症

常染色体劣性遺伝(NGFBの遺伝子変異)により、先天的に無髄C線維を欠くために全身

の温度核と痛覚が消失する。これにより末梢の侵害受容情報が中枢に送られないために 

組織損傷を検出できず、口腔内に咬傷や骨折を繰り返す。感染による痛みがわからない為

に指が壊死を起こす場合も多い。敗血症などの生命のリスクが高い。

痛みの感覚は生体の防御システムとして極めて重要である。

 

『侵害受容性疼痛の分類』

一次痛:針で刺されたような鋭い痛みで潜時が速く局在性も明瞭である。

Aδ線維(細い有髄線維)                      

二次痛:一次痛に続く鈍い痛みである。C線維(無髄線維)

 

ASICsについて

酸感受性イオンチャネルASICs)は組織の㏗低下により直接開く陽イオンチャネルである。

炎症、虚血、感染症、腫瘍など痛みを伴う病態において病変部位の㏗は低下して組織は酸性化する。細胞外プロトンASICsを活性化して侵害受容性疼痛が生じる。

ENaC/Degスーパーファミリーに属している電位非依存性Na⁺チャネルで

ASICsサブユニットのホモorヘテロ三量体構造をとる。

細胞外のプロトン(H⁺)が結合することによりチャネルが開いて細胞外から細胞内にNa⁺やCa⁺が流れて脱分極することで侵害受容性疼痛が生じる。

 

『侵害刺激を受容するイオンチャネルの作用機序について』

侵害刺激がTRPチャネルASICsによって受容されて、Na⁺やCa⁺が細胞外から細胞内に流入することで脱分極を引き起こす。これにより電位依存性Na⁺チャネルが活性化して  活動電位が発生する(侵害刺激が伝わっていく)。末梢神経に発生する活動電位の頻度は、 刺激強度の増加に伴って増加する。

 

『炎症、組織損傷時の侵害受容性疼痛に関与する受容体について』

生理的状態での侵害受容性疼痛はTRPチャネルASICによって誘発されるが、

炎症、組織損傷時の侵害受容性疼痛は、P物質を受容するNK-1受容体プロスタグランジン受容体・キニンを受容するブラジキニン受容体・ATPを受容するプリン受容体といった代謝型受容体によって誘発される。代謝型受容体によって炎症や組織損傷時末梢神経の 興奮性を高める。                      

 

「参考」痛みの増強機構

TRPV1受容体は正常では43℃以上で活性化されるが、炎症が起こりATPブラジキニンなどが放出されるとブラジキニン受容体の活性化によりTRPV1PKCによってリン酸化される。その結果TRPV1が36℃~37℃でも活性化されるようになり、体温でも活性化されるため慢性疼痛となる。これを末梢性感作という。(感作:刺激に対する反応が増大する)

 

受容器電位とインパルスについて

受容器に侵害刺激が加えられると、神経の末端部分には受容器電位(起動電位)

発生し、電位が閾値を超えるとインパルス(活動電位)が引き起こされる。

侵害受容器では受容器そのものが刺激の受容に関与することから、受容器電位と   図 

起動電位は同一のものと考えられる。C線維の熱刺激の閾値43℃つまりTRPV1の

閾値、熱刺激強度はインパルス頻度に変換(符号化)されて上位中枢へ伝達されていく。

 

侵害刺激に反応する受容器

閾値機械受容器:皮膚を損傷するような強い機械的刺激にのみ反応する

熱侵害受容器:熱刺激に対して強い反応を示す。

ポリモーダル受容器:機械刺激、熱刺激、発痛物質(化学刺激)など種類の異なる複数の  刺激に対して反応する。

 

軸索反射について

分岐した末梢神経末端部の一部の神経線維が刺激を受けると逆方向性のインパルスが発生

して、分岐したもう一方の枝に順行性の活動電位が生じて神経線維末端部からP物質や  

カルシトニン遺伝子関連物質CGRPなどの神経ペプチドが放出されて周囲に存在する血管

の透過性が増すという反射。軸索側枝を介して起こるため中枢の無い反射である。

 

脊髄後角における一次感覚ニューロンの投射様式について

脊髄の灰白質は細胞の大きさ、形、密度から10層(Ⅰ~Ⅹ層)に分類され、

感覚ニューロンが投射する脊髄後角は6層からなる。C線維は後角の第Ⅱ層に、   

Aδ線維は第Ⅰ層と深層にそれぞれ投射して二次ニューロンシナプスを形成してる。

脊髄後角ニューロンは、上位中枢に情報を伝える投射ニューロン、脊髄内の他の

ニューロンに情報を伝える介在ニューロンに分けられる。

 

脊髄後角ニューロンの種類

特異的侵害受容ニューロン:侵害刺激にのみ反応する。刺激強度変化に対するインパル      

ス 頻度変化が緩慢で受容野が狭い。第Ⅰ、Ⅱ層にある。

広作動域ニューロン:侵害、非侵害刺激の両方に反応。刺激強度変化に対するインパルス 

頻度が変化しやすい。受容野が広い。第Ⅲ~Ⅵ層にある。

これらの侵害受容ニューロンは脊髄だけでなくより上位の視床や大脳皮質においても検出される。

 

『痛みの上行路について』

内側系は脊髄後角から視床の髄版内核や正中中心核に投射し、大脳辺縁系に投射する。

外側系は脊髄後角から視床の後外側腹側核(VPL)に投射し、大脳皮質の一次体制感覚野に

投射する。

また大脳辺縁系扁桃体や海馬体からなり、海馬と扁桃体はそれぞれ記憶情動の発現に

重要な場であるため、大脳辺縁系に投射する上行路は情動に関わっている。